保険会社から治療費の打ち切りを打診されたら?4つの対処法を解説

2020年7月27日

交通事故の被害に遭い、加害者の保険会社から治療費を支払ってもらっていたところ、ある日突然、支払いの打ち切りを打診されてご相談に来られる方が多くおられます。

この記事をご覧の方の中にも同じ悩みを抱えている方もおられるのではないでしょうか?

そこで、この記事では

・治療費の支払いから打ち切りまでの流れ
・治療費の支払いを打ち切られたときの留意点
・治療費の打ち切りを打診された場合の対処法

について弁護士が詳しく解説します。

ぜひ最後までご一読いただき、保険会社から治療費支払いの打ち切りを打診された際の参考としていただけば幸いです。

弁護士保険ミカタ

交通事故における治療費の支払いと打ち切りまでの流れ

治療費の打ち切り

まずは、保険会社が治療費を支払う流れ、打ち切るまでの流れを確認しましょう。

交通事故の治療費は誰が払う?

交通事故で怪我をした場合、治療費(診察料、検査料、入院料、投薬料、手術料、処置料など)は誰が払うのでしょうか?

この点、加害者が任意保険に加入している場合は、

交通事故現場で加害者の任意保険会社に連絡【加害者あるいは被害者】

治療を受ける【被害者】
被害者が通院する病院へ連絡【保険会社】

加害者の保険会社から「同意書」を受け取り、サインして返送する【被害者】

病院へ治療費を支払う【保険会社】

という流れとなるのが一般的かと思います。

なお、交通事故直後に病院を受診し、保険会社の対応が間に合わない場合は、被害者がいったん治療費を支払い(立て替え)、あとで任意保険会社に請求することとなります。

あるいは、病院側に「交通事故に遭って受診した」「治療費の支払いは加害者の保険会社に支払ってもらうことになっている」などと告げると、治療費の請求を保留してくれる病院もあるようです。

保険会社が被害者から取り付ける「同意書」の意味

もっとも、保険会社が病院へ治療費を直接支払うためには、被害者から「同意書」を取り付ける必要があります。

なぜなら、保険会社は被害者がどんな怪我を負い、それに対して医師がどんな治療をしたのか、治療にかかった費用はどのくらいかなど、被害者に関する情報を病院に照会して確認しなければ病院に治療費を支払うことができないからです。

そこで、被害者がこの同意書にサインして保険会社に返送した後、保険会社が病院へ治療費を支払うという流れとなります。

なお、加害者が任意保険に加入している場合の保険関係は、強制加入保険である自賠責保険と任意保険の2階建ての構造となっています。

そして、まず、治療費は自賠責保険から支払われることになっており、自賠責保険の限度額(最大120万円)を超えた場合にはじめて任意保険から支払われる仕組みとなっています。

任意保険会社は被害者から同意書を取り付けた後、この自賠責保険の支払いについても対応することとしており、この対応のことを任意保険の支払いと併せて対応するという意味で一括対応といいます。
任意保険会社は自賠責保険の負担部分について病院に支払った後、自賠責保険会社に、代わりに支払った分を返してもらうこととしています)。

また、保険会社が被害者から取り付ける「同意書」には、上記のように保険会社が病院へ直接治療費を支払うための同意書のほかに、保険会社が病院へ被害者の治療内容、治療状況・経過、怪我の回復具合などに関する照会を行うことに対する同意書もあります。

保険会社は、被害者からこの同意書も取り付けると、逐一病院に対して被害者の治療経過等を照会することになるでしょう。
なお、被害者は病院側からも保険会社の照会に応じてよいのか同意を求められるでしょう。

保険会社は治療経過・怪我の回復具合を見極めながら治療費打ち切りを打診

こうして被害者から同意書を取り付けた保険会社は、逐一病院に対して被害者の治療経過や怪我の回復具合等を照会しながら、いつまで被害者に治療費を支払うべきなのか随時見極めています。

そして、保険会社は担当医師の意見なども参考にしながら「これ以上、被害者に治療費を支払うべきではない、支払う必要はない」と判断したときに、被害者に対して治療費支払いの打ち切りを打診するのです。

保険会社の治療費支払いの打ち切りに関する留意点

治療費打ち切りの留意点

次に、保険会社の治療費支払いの打ち切りに関する留意点をご紹介します。

保険会社の治療費支払いの打ち切りを強制的に止めることはできない

保険会社の一括対応はあくまで保険会社のサービスの一環でしかありません。

本来であれば、被害者がいったん負担した治療費(損害)を、保険会社ではなく加害者が被害者に金銭で賠償する、という流れとなります。しかし、それでは被害者、加害者に大きな負担となります。

また、保険会社が被害者に治療費を支払うこととしても、今度は被害者がそのお金を使って病院に治療費を支払うというやり方はいかにも迂遠です。

そこで、保険会社が、被害者・加害者の負担軽減のため、便宜上、加害者に代わり直接病院へ治療費を支払っているにすぎないのです。

その中で、保険会社が治療費支払いの打ち切りを打診してきても、これを強制的に止めることはできません。

保険会社に強制的に賠償金を支払うよう主張することができるのは示談を成立させた後(通常、後遺症がない場合は、治療費の支払いを打ち切られた後、示談交渉に入ります)となります。

もっとも、強制的に止めさせることができないだけであって、保険会社に任意で打ち切りを止めさせることはできます。そのためにはそれなりの根拠をもって保険会社と交渉する必要があります。

治療が必要と感じた場合は治療(通院)を継続する

保険会社は、自己の損失、つまり病院に対する治療費の支払い額をなるべく抑えようとします。

保険会社にとって治療費の支払いはまさに損失だからです。保険会社といえども営利企業ですから、治療の支払いを抑えようと打ち切りを打診すること自体、何ら不自然なことではありません。

もっとも、保険会社から治療費支払いの打ち切りを打診されたからといって治療(通院)を諦める必要はありません。

つまり、「治療費支払いの打ち切り」は「治療(通院)終了」ではない、ということです。

当たり前のことですが、これ以上治療(通院)の必要がない(症状固定)と判断するのは医師であって保険会社ではありません。

ご自身が治療(通院)を必要と感じ、かつ、医師からもまだ「治療(通院)の必要がない」と言われていなければ治療(通院)を継続すべきです。

治療費打ち切りの時期

では、交通事故からどのくらい経った時点で、保険会社から治療費支払いの打ち切りを打診されるのでしょうか?

この点は、結局は個々の怪我の状況、症状の改善状況等により異なるため一概に申し上げることはできません。

しかし、打撲は1か月、むち打ちは3か月、骨折は6か月がおおよその目安と言われています。

もっとも、これらはあくまで目安であって、個々の状況により、実際には短くなる場合もあれば長くなる場合もあります。

保険会社から治療費支払いの打ち切りを打診された場合の4つの対処法

では、最後に、保険会社から治療費支払いの打ち切りを打診された際の対処法をご紹介したいと思います。

担当医師に相談する

まずは、担当医師に治療を継続すべきかどうかよく相談することです。

そして、医師が治療を継続すべきと判断した場合は治療を継続すべきですし、継続する必要はないと判断した場合は基本的にはそれ以上、治療を継続すべきではないでしょう。

もっとも、保険会社は、前述のとおり、被害者から同意書を取り付けて以降、逐一、医師へ聴取するなどして被害者の怪我、治療状況、症状の改善具合等を確認しています。

そして、医師も保険会社の意見に同調している可能性も否定はできません。

そこで、医師から治療の継続は必要でないと言われても、医師に交渉してみる余地はあります。

そのためには、被害者自身、保険会社から逐一、怪我の状況等を医師に確認されている、という認識を持ち、保険会社から納得がいかない治療費支払いの打ち切りの打診をされることがないよう、常日頃からの治療方法、通院方法には留意しておくべきでしょう。

また、医師の指示には従い、医師とよくコミュニケーションを取っておくことがご自身の希望を叶える近道でもあります。

健康保険証を使って治療(通院)を継続する

もし、保険会社から治療費支払いを打ち切られたとしても、医師が治療の継続が必要と判断した場合は、できる限り、ご自身の健康保険証を使って治療を継続すべきです。

よく「交通事故では健康保険は使えない」と思っている方がおりますが、それは誤りです。

交通事故に遭っても、ご加入されている保険の保険者(国民健康保険であれば市区町村の窓口、健康保険であれば職場の担当者を通して)に「第三者行為による傷害の届出」を行えば、お手持ちの健康保険証は使えます。

また、健康保険証を使うことで、使わない場合に比べてご自身のご負担を少なく抑えることができます。

保険会社から治療費支払いを打ち切られた後であっても、治療にとって必要かつ相当な範囲内の自己負担分は、あとで加害者に請求することが可能です。

そのため、病院から受け取った領収書等は必ず保管しておきましょう。

なお、保険会社から治療費支払いを打ち切られた場合、

「健康保険証を使って治療を継続する」ことのほか、
「健康保険での自己負担分あるいは自由診療で要した治療費を加害者の自賠責保険へ被害者請求する」、
「ご自身が加入している任意保険の人身傷害保険を利用する」ことが考えられます。

通勤途中などの労災ならば、労災の療養給付もあります。

もっとも、両者の場合、すでに保険会社の一括対応により治療費の支払いを受けている場合は利用できない場合がありますので注意しましょう。

弁護士に相談する

保険会社から治療費支払いの打ち切りを打診された際に最も大切なことは、独断で打診を受け入れないことです。

すなわち、保険会社に回答する前に、一度、弁護士に相談した方がよいでしょう。

そして、まずは弁護士に保険会社の治療費支払いの打ち切りの判断・時期が適切なのかどうか判断してもらいます。

そして、打ち切りの判断・時期に少しでも疑義が残れば、弁護士があなたに代わって保険会社と治療費支払いの延長について交渉してくれます。

また、必要によっては前記(2)でご紹介した、自賠責保険会社に対する被害者請求、治療費支払いを打ち切られ後遺症が残った場合の後遺障害等級認定に向けた申請の手続きなどについても代行してくれます。

これらのことを日常生活と並行しながらご自身で行うとなれば手間や時間がかかりますし、何より精神的な負担も大きいです。

弁護士に一任すれば、交渉や手続のことを気にすることなく、治療や日常生活に専念することができます。

後遺障害等級認定の準備を進める

治療(通院)の継続や保険会社と交渉も大切ですが、他方で、治療や治療費支払いに見切りをつけ、後遺障害等級認定申請のための準備を進めることが必要な場合もあります。

後遺障害等級の認定を受けることができれば賠償金の増額が見込めますが、不必要に治療を継続していると適切な後遺障害等級の認定を受けることができず、後遺症に見合った賠償金を獲得できないおそれも出てきます。

したがって、治療や治療費支払いに見切りをつけるタイミングについても弁護士とよく相談の上決めるべきでしょう。

まとめ

保険会社から治療費の支払いを打ち切られた場合でも、まずは医師や弁護士に相談の上、対応を決めるべきでしょう。

それによって治療を継続すべきか、治療を止めて次のステップ(示談交渉、後遺障害等級認定の申請)に進むべきかが見えてくると思います。

弁護士

弁護士 黒田悦男 

大阪弁護士会所属
弁護士法人 茨木太陽 代表
住所:大阪府茨木市双葉町10-1
電話:0120-932-981

大阪府茨木市の他、京都市、堺市にて、交通事故被害者側に特化。
後遺障害認定分野については、注力分野とし、医学的研鑽も重ねています。