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【給料の未払いが発生】確実に払ってもらうための4つのポイント

自分が勤めている会社から、給料の振り込みが遅くなったり、未払いが起こったり等でハラハラした経験がある方は少なくないかと思います。

しかし、会社と交渉しようにも、どうしたらよいかわからない、とあきらめてしまうのはまだ早いです。

会社に勤務して働いている以上、会社にはあなたに給料を払ってもらう権利があります。

この記事では、働くあなたが正当に給料を払ってもらうための対応の仕方について、わかりやすく解説します。

目次

なぜ給料未払いが起こるのか

給与の未払いの理由

なぜ給料未払いが起こるのか、その原因は様々ですが、おおむね次のようなものです。

結論を先に言えば、本当にこのような会社に勤め続けるのが良いかどうか、真剣に考えるべきでしょう。

経営不振

資金繰りが行き詰まって、給料の遅配・未払いが起こる、というのはよくあるパターンです。

仕入先などには代金を支払わないと会社の業務が成り立たなくなる関係上まずそちらを優先し、従業員がすぐ辞めるわけではないとタカをくくって給料の支払は後回しにする、という考えです。

どんぶり勘定・ずさんな経営

ワンマン企業などで資金繰り管理がずさんなため、給料を払う段になってお金が足らなくなる、などです。

従業員とのトラブル

「従業員が仕事の上の失敗で会社に損害を与えたので、そんな者には給料は払えない」「急に退職されたので会社は大変迷惑した、給料は払えない」といったトラブルです。

ブラック企業

はじめから従業員をこき使い、給料支払いもでたらめな企業の場合には給料未払いが起こる可能性が高くあります。

労働法令を知らない

小規模零細企業などで労働法令の定めもよく知らず、給料支払いが会社の義務であるということも頭に入っていない経営者も見受けられます。

給料未払いは許されない【法令の定め】

給料の未払いは許されることではありません。

労働者は、労働力を売って生活の糧を得ます。労働力を会社が買ってくれなければ生活に困ってしまいます。そのような考え方から、労働法令や裁判の判例でも労働者の保護を徹底しています。

そしてこれらは強行法規です。

就業規則や労働契約などで、これらの基準より労働者に不利な定めをしても効力はありません

賃金支払の原則(労働基準法24条)

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければなりません。

毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことも必要です。

もちろん、給与振込の定めがあればそれに従いますが、振込当日に全額利用できることが条件です。
なお、毎月払いの原則については、ボーナスなどの例外はありますが、これも法令等の定めに従って許されているものです。

会社がこれに違反する場合には30万円以下の罰金に処せられます(同法120条)。

労働者の損害賠償責任は制限されている

労働者が不注意などで会社に損害を与えた場合に、会社が賃金支払について「労働者が会社に加えた損害の賠償と相殺する」などと言うことがありますが、これは適切ではありません。

労働者の損害賠償責任は次のとおり制限されています。

賃金全額払の原則により、賃金債権に対して、損害賠償請求権をもって相殺することは許されません

1. 労働者に故意または重過失がある

会社は労働者に故意または重過失がある場合のみ損害賠償請求ができます。

うっかりミス程度のことでは、会社は労働者に損害賠償請求はできません。

例えば、飲食店で従業員がうっかりお皿を割ったからといって、その分を給料から差し引くことはできません。

(若いアルバイトなどが、これを知らずに泣き寝入りしていることも多いようです。経営者としてもしっかり心していただきたいところです)。

2. 労働者の損害賠償請求の範囲は制限される

1.によって会社が労働者に損害賠償請求できる場合でも、会社とは損害を公平に分担すべきと考えられており、労働者への損害賠償請求は一定の範囲に制限されます
(たとえば、その事態によって「損害額の半分」「○百万円を限度とする」などの裁判例があります)。

この考え方は、裁判の判例で確立してきたものです。

労働者は、会社の指揮命令のもとで働いており、会社も危険の発生について責任を負っています。また会社は事業活動から利益を得ているので、リスクについても負担を負うべきである、などと考えられています。

労働者の退職を妨げることはできない

労働者は、次の要件に従っていれば自分の意思で退職することができます。

会社が退職を妨げることはできません。

勤務していた期間についての給料は払わなければなりません。急な退職で、会社が損害を被ったなどといって損害賠償請求することもできません。

もちろん、労働者としては会社と話し合い円満退職になるように配慮するのが望ましいとはいえます。

1. 無期労働契約の場合

期間の定めのない労働契約の場合には、労働者はいつでも退職を申し入れることができ、2週間たてば退職の効力が発生します。

この2週間の予告というのは、労働者の辞職の自由の保護のための定めです。

2. 有期労働契約の場合

有期労働契約の場合、契約期間も契約の内容なので、その途中での退職は基本的に契約違反となります。

もちろん就業規則や雇用契約に、契約期間途中であっても退職できる定めがあればそれに従います。

ただし、1年を超える有期労働契約の場合は、契約の初日から1年を経過したら、労働者は会社に申し出ればいつでも退職できます(一部例外あり)。

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給料未払いへの対応方法と相談先

給与未払いの対処

それでは、実際に給料の未払いがあった場合にどのように対応したらいいのかを考えてみましょう。

なお、ご自分で対応するのは困難な場合が多いと思います。早めに公的機関や弁護士などへ相談することをおすすめします。

証拠の収集などの事前準備

どのように対応するとしても、ともかく証拠が必要です。次のようなものが該当します。

雇用関係があることを証明できる証拠

労働契約書、労働条件通知書、給与明細書など

給料計算の根拠となる証拠

就業規則、退職金規定など

勤務状況を証明できる証拠

タイムカード、業務日誌、入居しているビルの入退館記録、その他勤怠に関する書類など

給料未払いを証明できる証拠(遅配、一部払いなども含む)

給与明細書、給与振込の場合の金融機関の預金通帳など

これらは一つの書類でも様々なことが証明できる場合があります。関係のありそうなものを手広く集めることが大事です。

ただし「これは社外秘資料である」などとして持ち出しが難しい場合も多いと思います。

さらには証拠の集め方についても、ご自分ではなかなか見当がつかないでしょう。早めに公的機関や弁護士など専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

なお、会社には労働時間の把握義務と記録保管義務があります

実際の交渉の場面で、公的機関や弁護士のサポートを受ければ、会社に対して記録提出を求めるといった対応もしてくれるでしょう。

自分自身で対応する場合

会社の社長など経営者との話し合い

直属の上司などが、勝手な判断で給料を支払っていない、という可能性もあります。

この場合には、社長など経営者に直接話をすれば解決する可能性はあります。
直属の上司以外に信頼できる上司がいるなら、その人に相談するのも一つの方法です。

内容証明郵便で請求する

「会社に対して給料未払いがありその支払いを求める」という趣旨を内容証明郵便で通告する、という方法です。

これだけで強制力があるわけではありませんが、後日の会社との交渉や公的機関などとの相談の際に、会社に請求しているということを立証する手段となります。

会社が「そんなことは聞いていなかった」とは言わせない、ということです。

賃金債権には消滅時効があり、内容証明郵便の送達は「催告」(改正民法150条1項)となり、時効の完成猶予が認められます。

ただし、再度の催告は、時効の完成猶予の効力が認められていませんので、内容証明郵便送達後6箇月を経過するまでに「裁判上の請求」等をしないと時効完成となりますので、ご注意ください。

都道府県労働局「総合労働相談コーナー」への相談

自分だけで解決できず、公的機関に相談する場合には、まず総合労働相談コーナーに相談することをお勧めします。

職場トラブル全般の相談・情報提供を行っている機関なので、「本当に法令違反なのか?」「解決するためにどのような行動をすべきか」など様々な相談に応じてくれます。

前述の証拠の集め方についてもアドバイスしてくれるでしょう。

さらに会社への指導などの対応もしてくれます。給料未払いという法令違反が事実であると判断されれば、指導監督権限を持つ労働基準監督署に取り次いでくれます。

【参考】 総合労働相談コーナーの所在地

労働基準監督署への相談

労働基準監督署は、会社が労働法令等に違反しないように監督指導する機関です。

もちろん労働者からの申告・内部告発も受け付けていますので、給料未払い等の法令違反があった場合には、労働基準監督署が対応する案件となります。

とはいえ、労基署は指導監督がメインの仕事であり、少額の給料未払いについて親身になって相談できるほどの余力があるかどうかわかりません。また、会社と労働者の間の交渉をアレンジすることも難しいでしょう

総合労働相談コーナーを経由して労働基準監督署に情報が伝わるという方が、実際にはスムーズかと思います。

【参考】全国労働基準監督署の所在案内

弁護士への相談

弁護士というと敷居が高いというイメージを持っている人も多いかと思いますが、会社との交渉・支払督促・労働審判・民事調停・少額訴訟・民事訴訟などを、法的な観点を交え相談・依頼することができます。

中でも労働者からの労働相談を専門的に受け付けている弁護士をお勧めします。労働者の実情をよく知っており、初めの相談などは無料やごく少額の費用で引き受けてくれる弁護士もいます。
労働紛争の解決については、次のように様々な選択肢があります。

①会社経営者との交渉

どのような会社経営者でも、弁護士が代理人となって交渉に臨んでくると真剣に対応せざるを得ません。弁護士が対応するだけで解決する場合も少なくありません。

②支払督促

給料の未払いが明確ならば、裁判所に申し立てて支払督促という簡便な手続きで会社に支払を求めることも可能です。

会社が2週間以内に異議の申立てをしないと会社の支払義務が確定し、強制執行することも可能になります。会社が異議を申し立てれば通常の民事訴訟手続きに移行します。

【参考】裁判所ホームページ「支払督促

③労働審判

労働事件に関しては、裁判所で通常の訴訟と異なる「労働審判」という手続きが設けられています。原則として3回以内の期日で、迅速・適正かつ実効的に解決するものです。

裁判官である労働審判官1名と、労働関係の専門的な知識経験のある労働審判員2名の「労働審判委員会」が審理し、適宜調停を試み、調停がまとまらなければ、「労働審判」に移行します。

ここで異議の申し立てがなければ審判の内容が確定します。
異議申立てがあれば、訴訟に移行します。

【参考】裁判所ホームページ 1. 労働審判制度とは

④その他

その他、民事調停、少額訴訟、あるいは正規の民事裁判など様々な手続きがあります。
労働問題の専門の弁護士ならばどの手続きがふさわしいかを判断して、対応してくれるでしょう。

これらについて専門的に対応できるのは弁護士だけであり、ともかく一度相談してみることをお勧めします。

なお、②以下の裁判所などでの手続きについて、労働者自身がすることも制度上は認められていますが、専門的な知識経験が必要です。

ご自分で手続きを行うことは率直に言って、お勧めできません。

そのほかの相談機関

上記以外にも様々な相談機関があります。簡単にご紹介します。

全労連労働相談ホットライン

全国労働組合総連合の労働相談ホットライン窓口です。労働組合による団体交渉をお考えなら、一度あたってみてはいかがでしょうか。 

参考 全労連労働相談ホットライン

法テラス(日本司法支援センター)

国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」です。適切な相談窓口を紹介してくれたりします。労働問題については「労働」を参照ください。

参考 法テラス

かいけつサポート

裁判によらない紛争解決手続(裁判外紛争解決手続(ADR)*の取り扱いについて、法務省の認証を取得した業者です。労働関係の機関については、例えば次を参照ください。

・労働関係紛争
全国の社会保険労務士会の紛争解決センター、産業カウンセラー協会のADRセンター等。

*裁判外紛争解決手続 (ADR)とは
民事上の紛争を、当事者と利害関係のない公正中立な第三者が、当事者双方の言い分を聞き、和解解決を図る機関です。 
参考:ADR

参考 かいけつセンター  

給料未払いの請求する際の注意事項

給料未払いの請求

賃金債権には時効がある

賃金請求権については3年間で時効消滅し、それ以前の未払給料は払ってもらえなくなります。(民法の改正により2020年4月から)

退職後でも請求は可能

退職後でも未払い給料の請求は可能です。上記の通り時効には注意してください。

また、退職後には様々な証拠を集めるのが難しいかと思いますが、もし在職中に集めたものがあれば弁護士と相談してみてください。

前述の通り、会社には労働時間の把握義務と記録保管義務があります。実際の交渉の場面では、弁護士から会社に対して記録提出を求めるといった対応もしてくれるでしょう。

会社倒産後でも立替払い制度がある

会社が倒産してしまっていた、という場合でも諦めないでください。

厚生労働省では、企業倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立替払してくれる制度があります。

全国の労働基準監督署及び独立行政法人労働者健康安全機構で制度を実施しています。

労働基準監督署や独立行政法人労働者健康安全機構への申し立てなどの手続きが必要で、また支払ってくれる給料などについても一定の制限があります。

実際に申し立てする場合には総合労働相談コーナーや労基署・弁護士などのサポートを受けることをお勧めします。

参考 厚生労働省サイト 未払賃金立替払制度の概要と実績

まとめ

給料の未払い問題は、働く人にとっては生活に直結します。一方では、ともかく働いていないとこれからの給料ももらえなくなる、そんな弱みも感じておられるでしょう。

一生懸命に働きながら、給料未払いについて会社と交渉するというのはとてもハードルが高いものです。
ネットの上では様々な情報が飛び交っています。しかし、ご自分で情報を集めて、慣れない書面を作って交渉するのは非常に困難かと思います。

本文で繰り返し述べた通り、おひとりで悩むのではなく、公的窓口などへの相談、さらに弁護士などの専門家に頼ることをお勧めします。
それが速やかで適切な解決につながっていくでしょう。

この記事が、給料の未払いに悩むあなたのお役に立てば幸いです。

この記事を書いた人

玉上 信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士 
健康経営エキスパートアドバイザー
紙芝居型講師(登録商標第6056112号) 
日本紙芝居型講師協会(登録商標第6056113号)
日本公認不正検査士協会アソシエイト会員

監修 弁護士

河田映子 弁護士

大阪弁護士会所属
唯一法律事務所  
大阪府大阪市北区西天満3-4-4 イワイビル605号
06-6315-0778
薬剤師資格をもつ弁護士として活躍。
日常の法律事務を迅速・的確・誠実に処理するとともに、常にチャレンジ精神を持って新しい分野の仕事にも取り組んでいます。

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