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「養育費を増額してほしい」~払わないと言われてもあきらめないで!~

この記事を書いた人
篠田弁護士

篠田恵里香 弁護士

東京弁護士会所属

へいわ総合法律事務所 代表弁護士

東京都豊島区東池袋三丁目1番1号 サンシャイン60 45階
Tel.03-5957-7131

2008年弁護士登録。
男女問題、交通事故を中心に、幅広い分野を扱う。
大切な人生の分岐点を、一緒に乗り越えるパートナーとして、親身になって対応させていただきます。

目次

養育費の計算方法が変わった?

少し前に、「養育費の金額が変わります!」というニュースを聞いた方もいらっしゃるかもしれません。

令和元年12月頃ですが、養育費の計算方法が見直されたからです。

それまでも、実務では、裁判所が採用している「養育費算定表」というものを利用して、「養育費がいくら」という計算を行っていましたが、「少し低すぎるのではないか」、「実態に即してないのではないか」などの意見を受けて、改めて、計算方法が吟味されたわけです。

この養育費算定表は、

①父母の職業は?(給与か自営か)
②父と母の収入はそれぞれいくら?
③子供は何歳?何人?
④子供はどちらが育てている?

という内容が分かりさえすれば、ほぼ自動的に養育費の金額が分かるように作成されています。

この算定表の計算方法は、令和元年12月23日から修正されており、新しい方のものは、新算定表などと呼ばれています。

この新算定表は、受け取る側が有利になるように基本的に修正されていますので、令和元年12月23日以降は、多くの方が、「新算定表で計算し直したら金額が上がる!」という結論になりやすくなっています。

養育費の増額を請求するには?

養育費を増額したい!と思った場合には、まずはお話し合いですね。

当事者のお話合いでまとまれば早いですし、それに越したことはないです。ただ、お話し合いがまとまらない場合には、弁護士に交渉を依頼したり、裁判所を使った手続きを取ったりせねばなりません。

また、お話し合いでまとまった場合でも、「今後支払いが滞ってしまう」可能性が少しでもあるのであれば、その合意内容について、公正証書を作成することをお勧めします。

公正証書を作成しておけば、「約束通りに養育費を支払ってもらえない!」となった場合でも、公正証書の効力で、相手の給与を差し押さえたり、預金を差し押さえたりすることが可能になります。

さすがに、「養育費未払いで給与を差押えられた」というのも格好悪いので、通常は心理的にも、支払いを促すことができます。

養育費増額のお話し合いがまとまらない場合には、「どうしよう」と悩んでいる暇はありません。

早急に、養育費の増額を求める調停を申し立てる必要があります。

これを「養育費増額調停」といいます。調停を申し立てさえすれば、仮に調停で話し合いがまとまらなくとも(調停不成立)、心配ありません。

最終的には裁判所が適切な額を認定してくれます。これを「審判」といいます。いずれにせよ、「お話し合いではまとまらない」と判断したら、養育費増額請求調停を申し立てましょう。

養育費増額請求調停は「急ぐ」べき?

養育費増額請求調停は、とにかく「早急に」行ってもらう必要があります。このスピード感がとても重要な意味を持つことを知っておいてください。

調停を申し立て、養育費を増額できる理由があれば、基本的には、裁判所の説得等によって、当事者で増額の合意ができたり(調停成立)、審判で増額を認めてもらったりすることができます。

しかし、仮に、養育費を増額できる理由があったとしても、裁判所に養育費の増額を認めてもらえるのは、原則として、「調停を申し立てたその月から」となってしまいます。

例えば、ずるずると7月、8月、9月・・・と放っておいてしまうと、せっかく増額が認められるはずだったのに、「10月以降から増額する」という判断しかもらえなくなってしまうのです。

つまり、7月~9月分を遡って支払え、という事はできなくなってしまいます。

新算定表の新基準によって月2万円程度増額する方でも3か月で6万円の損、他の理由で月5万円ほど増額できたはずの方は15万円の損、となってしまいます。

これは、通常の養育費の支払いを請求する「養育費分担請求調停」も同じことが言えます。

養育費の支払い義務を認めてもらえるのは、「裁判所に調停を申し立てたその月」からになりますので、「養育費を支払ってもらいたい!」、「養育費を増額したい!」という方は、1日でも早く調停を申し立てることが重要です。

養育費の金額を決める判断要素とは?

先ほど述べたとおり、養育費の金額は、

①父母の職業は?(給与か自営か)
②父と母の収入はそれぞれいくら?
③子供は何歳?何人?
④子供はどちらが育てている?

以上①~④によって、ほぼ決まります。

シンプルな考え方ですが、①と②は、子供を育てるために、父と母はそれぞれどれだけお金を使えるか、を示しています。

③は、小さいお子さん(14歳まで)と、少し成長したお子さん(15歳以上)では、15歳以上のお子さんの方がお金はかかるでしょう、という考え方を基にしています。また、「何人育てているのか」も、どれだけお金がかかるか重要な要素なので、これを判断する、ということになります。

④は当然、「子供を育てている側に養育費を支払う」という考え方のためです。

そして、養育費というものは、「離婚して離れて暮らしていても、父(母)として親子であることに変わりはないのだから、自分の今の生活レベルと同じくらいの生活レベルを保てるよう、子供のためにお金を払ってね。」というものであり、「同じ生活レベルを保障するためにはいくら払えばいいのか」を表したものが養育費算定表、ということになります。

養育費の増額が認められる一般的な要件は?

養育費の考え方が、先ほどの①~④に基づくものだとすると、特に、①と②による「子供のためにいくらお金を使えるか」の部分に変動があると、養育費が増額できる可能性がでてくるということになります。

例えば、養育費を支払う側(「義務者」といいます。)の収入が急増した、養育費をもらう側(「権利者」といいます。)の収入が激減した(職を失った)という事情は、養育費を増額する理由となります。

ただ、養育費をもらう側が、「養育費を増額するためにあえて退職した」というようなケースでは、増額は認められにくく、「働きたいのに働けなくなった」というような理由が、通常は必要と言えるでしょう。

また、義務者の扶養すべき家族が減った(扶養してくれる家族が増えた)、権利者の扶養すべき家族が増えた(逆に扶養してくれる家族が減った)という場合も、「子供のために使えるお金」に変動があると考えられるため、養育費の増額理由になります。

典型例は、「再婚」や「離婚」ですが、「養子縁組」や「離縁」といった事情によっても、「扶養すべき家族が増えた(減った)」、「扶養してくれる家族が増えた(減った)」ということがあり得ます。

権利者である母親が、「病気で働けない男性と再婚した」ということであれば、その男性も追加で扶養しなければならないことから、増額が認められる可能性があります。

義務者が再婚していて「新しい妻と連れ子の面倒を見ていたけれど離婚した」ということであれば、義務者の扶養すべき家族が減りますので、養育費の増額が認められる可能があります。

養育費の増額が認められる特別なケースは?

「いろいろお金がかかるので、もらっている養育費だけではとても足りない!」という場合、先ほどの「収入の変化」等以外の理由でも、養育費の増額が認められる可能性があります。

例えば、

①子供が病気や怪我をして医療費が高くなった
②子供の塾や習い事の費用が高くて生活費が足りなくなった
③子供が私立の学校に進むことになり学費が高くなった
④子供が大学進学を希望しており費用が足らない
⑤子供が留学したいと言っていて資金が足りない   など

特別な費用が必要となるケースは少なくありません。

①のような突発的な事情については、基本的には、医療費が多額であることを理由に、養育費の増額が認められる可能性が高いです。

②~⑤については、これは、あくまで、「するかしないか基本的に選択ができる」ものなので、「養育費を支払う側(義務者)に相談せず勝手に決めた」場合や、「義務者が反対しているのに決めてしまった」場合は、その費用負担を義務者に求めることは認められない可能性が高いでしょう。

一方、②~⑤の事情について、「義務者も賛成していた」、「義務者の意向により決定した」ということであれば、「義務者と権利者の収入割合に応じて(実際には細かな計算が入ります。)一緒に負担しましょう」となる可能性は高いと言えるでしょう。

学費についてどう考える?

養育費の金額については、学費の負担が大きな争点になることも多いです。

「学校への進学」については、養育費算定表にしたがうと、「義務教育として“公立学校”を卒業するまで」を前提としているので、「私立学校に進む」場合や、「大学に進む」場合には、これらが考慮されていないことになります

「私立学校に進むことがやむを得なかった」場合や、「私立学校に進むことを義務者も同意していた」場合には、「(公立学校で通常かかる費用を除いた)私立の学費」について、一緒に負担してくださいとなる可能性が高いでしょう。

また、大学についてもほぼ同様で、義務者が同意していたかは大きな考慮要素となります。そして、父母共に大学を卒業している場合や、子供の経歴上大学に進むのが通常である場合(大学附属の高校に進学していた場合など)なども、大学を卒業するまでの大学の学費の一部等を負担してもらえる可能性が高いでしょう。

相手の言い分はとおる?

養育費の増額を申し入れた際に、「文句を言うなら養育費はもう払わないぞ」、「お前がもっと働けば何とかなるだろう」などと、拒否されることもあると思います。

しかし、養育費を支払うのは「親としての義務」であり、「払いたくない」と言って逃れられるものではありません。

権利者が頑張って働いている、働きたくても働けていない、といった場合に、「もっと働け」という理由で増額を拒まれる理由もありません。

勿論、「働けるのに働かない」という場合は、裁判所も、「仮に働いたとしたらいくらくらい稼げそうか」ということを計算して、「働いていないけれど収入がある」とみなして計算してしまうこともままあります。いずれにせよ、理不尽な回答をされた場合には、弁護士に相談していただくか、裁判所に調停を申し立てることをお勧めします。

「離婚するときに金額は決めただろ!増額の話はしないと言っただろ!」と増額を拒否されることもあるかもしれません。

仮に、離婚する際に、「養育費の増額は求めません」と約束をしていたとしても、あきらめる必要はありません。

養育費は、「子供が生きていくためいくら支払われるべきか」というものであり、「増額しない」と取り決めても増額事由がある限り、原則として増額を求めることはできます。増額したい!と考えたときには諦めないで方法を考えましょう。

最後に

養育費を増額してほしい、と思っても、相手から文句を言われたり拒否されたりすることをおそれて、なかなか言い出せない方も少なくないようです。

しかし、現在は、新算定表ができたことにより、養育費を増額できる可能性も高くなっていますし、養育費は、お子様の成長にとってとても大事なものですので、「養育費、少しでも増額できないかなあ」と考えた方はあきらめずに、弁護士や裁判所をうまく頼ってくださいね。

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