<新型コロナ解雇>失業保険を自己都合にされたときの対抗策

2020年7月15日

総務省が2020年6月に発表した「5月の労働力調査」では、完全失業率が2.9%となっており、2017年5月以来の高い数値となりました。

今後も、新型コロナウイルスを始め様々な災害などで、失業者が慢性的に発生する予測が立っています。

ここで、気を付けておきたいところが「雇用保険(失業保険)」についてです。

特に、離職理由が会社都合でなく自己都合となってしまった場合に、失業保険の給付までに倍以上の時間がかかってしまう可能性が少なくありません。

今回の記事では、失業保険の仕組みや100%活用するためにすべきことをお伝えいたします。

ぜひ参考にしてみて下さい。

弁護士保険ミカタ

雇用保険とは何か

雇用保険と失業等給付

雇用保険は国家が運営する公的な保険です。

労働者を雇用する事業主(会社)は原則として必ず加入します。

その代表的な給付が「失業等給付」です。

雇用保険の被保険者である労働者が定年、倒産、自己都合等のために離職した場合に、失業中の生活を心配しないで仕事探しが出来るように給付金が支給されます。

失業等給付は4種類ある

失業等給付には基本手当、求職促進給付、教育促進給付、雇用継続給付の4つがあります。

代表的なものが基本手当です。(いわゆる失業手当)

「雇用保険」というと、この失業のときの「基本手当」が一般にイメージされますので、「失業保険」という言い方をされることもあります。

退職して働く意思と能力がありながら、再就職できない場合に給付されます。

基本手当 いわゆる休職中にもらえる失業手当のこと
基本手当(失業手当)の手続きについて
就職促進給付 再就職手当、就職手当など就職後にもらえる手当のこと
就職促進給付の手続きについて
教育促進給付 就職のための教育訓練経費の一部がもらえる手当のこと
雇用継続給付 高齢者や、育児休業、介護休業した方がもらえる手当のこと

出典:ハローワーク利用案内 雇用保険と失業等給付の関係

失業保険(基本手当)の詳しい内容

基本手当はいつからもらえるのか、幾らもらえるのか、いつまでもらえるのか、を確認しましょう。

失業保険 いつからもらえるか

前提として、退社理由が「会社都合」か「自己都合」かにより、雇用保険がもらえる時期が異なります。

「解雇・定年・倒産など会社都合の退職」の場合には、原則7日間の待機期間が過ぎればすぐに支給されます。

一方、「自己都合による退職」の場合には、7日間と「3ヵ月の給付制限期間」を過ぎてから支給されます。

解雇・定年・倒産など会社都合の場合には、労働者は、事前に離職時に備えた準備もできないままに離職を余儀なくされたわけで、速やかに給付する必要があります。

労働者が自分の都合で退職したのならば、準備する時間もあったはずで、給付を急ぐ必要はないからです。

失業保険 いくらもらえるのか

給付額(基本手当日額)は、離職時の賃金水準や勤務期間に応じて決定されますが、上限額があります(下限額もありますが、これは現在一律2,000円になっています)。

大ざっぱに言えば、給与の総支給額保険料等が控除される前の額。賞与は除きます。)により、次の通りになります。

平均して月額15 万円程度の場合、支給額は月額11 万円程度

平均して月額20 万円程度の場合、支給額は月額13.5 万円程度
(離職時の年齢が60歳以上65歳未満の方は月額13万円程度)

平均して月額30 万円程度の場合、支給額は月額16.5 万円程度
(離職時の年齢が60歳以上65歳未満の方は月額13.5万円程度)

およその計算式は、

基本手当日額 は、(離職前6か月の給与の総支給額の合計÷180日)×給付率です。

給付率は、離職時の年齢、賃金により、45%~80%になります。

失業保険 いつまでもらえるのか

給付日数(もらえる日数)は最短日数が90日、会社都合の退職の場合には最長330日となります。(45歳以上60歳未満の障害者等の就職が困難な方は最長360日間)

自己都合の場合と倒産解雇等との場合では大きな違いがあります。

1、倒産解雇等以外の理由でやめた場合(自己都合等)

被保険者の期間 1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
支給日数
(全年齢)
90日 90日 90日 120日 150日

2、倒産解雇等の理由でやめた場合

被保険者の期間
(支給日数 )
1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上 35歳未満 90日 90日 180日 210日 240日
35歳以上 45歳未満 90日 90日 180日 240日 270日
45歳以上 60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上 65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日

3、就職困難者の取り扱い(障害者手帳の所有者等)

障害者手帳の所有者等就職困難な方については、支給期間について特別の定めがあります。

被保険者の期間 1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
支給日数 (45歳未満) 150日 300日 300日 300日 300日
45歳以上 65歳未満 150日 360日 360日 360日 360日

仮にあなたが44歳で、被保険者期間(勤続年数)20年以上とすると、支給日数は、自己都合なら150日、会社都合なら270日となります。

あなたが45歳以上ならば、自己都合なら同じ150日、会社都合なら330日となり、退職事由の違いだけで給付日数が120日分から180日分も異なることになります。

なお、受給できる期間にも注意が必要です。

原則として離職日の翌日から1年間です

この期間内の失業の状態にある日(受給手続き後の日に限ります)について、所定給付日数を限度として支給を受けることができます。

この期限を過ぎると、所定給付日数分がまだ残っていたとしても、支給を受けることはできません。

失業保険 受給のための要件

基本手当というのは、「失業してしまったが、働く意思と能力があり仕事を一生懸命探している方に支給される」ものです。

受給のための要件を詳しく確認してみましょう。

1、働く意思と能力があること

ハローワークで求職の申込みを行い、就職する積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない、ということが必要です。

逆に、働く意思と能力がないならば基本手当はもらえません。

2、ある程度以上の期間働いていて、雇用保険加入の要件を満たしていること

離職の日以前2年間に、働いた日数が、月に11日以上あり雇用保険に加入していた月が通算して12か月以上ある場合

ただし、倒産・解雇等で職を失った場合(特定受給資格者)や、雇い止めその他やむを得ない理由で離職した場合(特定理由離職者)は、

離職の日以前1年間に、働いた日数が、月に11日以上あり、かつ 雇用されていた月が、通算して6か月以上あれば良いということになっています。(雇用保険法13条)

3、基本手当がもらえない場合がある

次の場合は働く意思と能力がないと考えられますので、手当は受けられません。

・病気やけがですぐに働けない場合
・妊娠・出産・育児のため、すぐに働けない場合
・退職後、しばらく休養しようと思っている場合
・結婚などにより家事に専念しようと思っている場合

なお、ここに掲げたのはごく一般的な要件です。個別の事情で基本手当がもらえたり様々配慮される事があります。

例えば、前の会社を病気やけが、妊娠、出産、育児などの理由で退職したためすぐに働くことができない、といった場合には、すぐに基本手当を受けることはできません

そのままでは「離職日の翌日から1年間」という受給期間も過ぎてしまいますが、離職日の翌日から1年以内に30日以上継続して職業に就くことができない場合は、受給期間の延長申請を行うことができる、という定めがあります。

本来の受給期間1年に、働けなかった日数を加えることができ、職業に就くことができる状態になった後に、受給手続ができます。

ただし、受給期間(1年)に加えることができる期間は最大3年間です。

従って、合計で4年以内に受給することが可能になります。

非正規社員の場合の取り扱い

非正規社員であっても次の2つの適用基準に該当すれば雇用保険の被保険者となります。

先ほど説明した要件に該当すれば基本手当が支給されます。

【非正規社員が雇用保険の被保険となる適用基準】

以下2つのいずれも満たすこと

1、31日以上引き続き雇用されることが見込まれること。

具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。

・期間の定めがなく雇用される場合
・雇用期間が31日以上である場合
・雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
・雇用契約に更新規定がなくても、同様の雇用契約で雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合

2、1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。

弁護士保険

退社における「会社都合」と「自己都合」について

「本来は会社都合でやむなく退職したのに、離職票には自己都合と書かれていた」という場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

また、自己都合と言いながら、様々な事情があってやむなく退職せざるを得なくなった、ということもあるでしょう。

これらはよくある事態であり、ハローワークなどでも対応の仕方をガイドしています。

確認していきましょう。

離職時の基本的な流れ

1、雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書の確認

会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークに提出します。

出典:「行政手続のオンライン利用の推進」(総務省)

これらの書類は、退職前に本人が記名押印、又は自筆による署名をすることになっています

離職理由等の記載内容を確認したうえで記名押印又は署名してください。

「会社都合」であるはずが「自己都合」と書かれていたら、すぐ指摘して訂正を求めてください。

なお、会社が訂正に応じないといった理由があれば、その状況をしっかり記録しておいてください。

また、会社が自己都合退職を勧める場合もあります。次項で説明するとおり、うかつに応じないよう注意しましょう。

また、自己都合退職と言いつつ、パワハラなど様々な事情で離職せざるを得なくなった場合なども有り得るでしょう。

そのようなときは事情がよくわかるような資料をできるだけ整えておいてください。

2、会社が自己都合退社を進める場合があるが、うかつに応じないこと

ハローワークで次のような注意喚起がされています。

「離職証明書に記入する退職理由に対し、企業から自己都合退社をすすめられる場合があります。

◆理由として会社都合による退職では、解雇予告通知書の発行や退職金の割り増しが必要になるケースがあり、また、会社都合での退職が多い企業は、各種助成金の申請が受け付けられない、ハローワークに求人情報を公開できないなど、様々なケースに該当する可能性があります。そのため自己都合での退職をすすめることがあるようです。


◆また退職理由を解雇にした場合、再就職ができにくくなるなどと間違った知識を植え付け、自己都合に誘導するケースもあるようです。懲戒解雇以外の普通解雇では、再就職に影響がでることはありませんので間違った知識に惑わされることのないよう注意してください。」


3、離職票の確認
離職後10日以内に、会社から「離職票」が送られてきます。(受取りに行く場合もあります)10日以降送られてこない場合は会社に連絡して催促してください。

離職票に離職理由が書かれていますので、正しいかどうかを確認してください。

間違っている場合には、次のとおりハローワークでその旨を申立ててください。

離職票の離職理由が実際の離職理由と違うときの対応

実際の退職理由と違う場合

実際の退職理由は会社からの解雇なのに、離職票に自己都合退職と記載されている場合など、実際の退職理由と離職票の記載が異なる場合は、雇用保険(基本手当)の受給手続時に、ハローワークの担当者へその旨はっきり申し出てください。

離職票そのものに「事業主が○をつけた離職理由に異議あり・なし」を記入する欄があります。異議ありに○をつけましょう。

また、離職理由を証明する書類等があれば、これを持参することで離職理由が変わる可能性があります。

ハローワークでは、本人の主張、証拠書類と事業主の主張等を確認の上、離職理由を決定してくれます。

ハローワークに相談

仮に自己都合退職であっても、本人の原因ではなく会社などに問題がある場合、ハローワークで会社都合扱いとなることがあります。

例えば、労働条件が労働契約締結時と著しく異なっており、勤め続ける事ができなくなったとか、過重労働に耐えられなくなった著しいハラスメントを受けた働き続けると健康被害のおそれがある、など様々な事例が該当します。

新型コロナの感染の懸念があるのに、会社がちゃんと手を打ってくれないのでやむなく退職した、というのも該当しうるでしょう。

心当たりがあればハローワークの担当者に、ぜひその事情を話してみてください。

「なぜ退職することになったのか」という事情をしっかり話すことにより、労働者にどのようなサポートができるか?ということを考えてくれるでしょう。

そのためには、労働者自身で心当たりのことをメモしておいたり、労働時間とかハラスメントなどの事実がわかる資料をできる限り用意しておくということをお薦めします。

(参考)妊娠中の女性労働者について

厚生労働省5月7日報道発表資料

妊娠中の女性労働者の新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置が本日から適用されます
「妊娠中の女性労働者が、母子保健法の保健指導又は健康診査に基づき、その作業等における新型コロナウイルス感染症に感染するおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師又は助産師から指導を受け、それを事業主に申し出た場合には、事業主は、この指導に基づき、作業の制限、出勤の制限(在宅勤務又は休業をいう。)等の必要な措置を講じるものとする。」


会社が、この通達に定めるような配慮をしてくれないため、止むを得ず自己都合退職した場合などは、ぜひその事情をハローワークの担当者に話してみてください。

ハローワークの離職理由の決定処分に不服があるときは審査請求ができる

ハローワークの離職理由の決定処分について、不服がある場合にはどのように対応したらよいでしょうか。

不服がある場合は、処分を行ったハローワークを管轄する都道府県労働局用保険審査官に対して、処分のあったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に審査請求(不服の申し立て)を行うことができます。

ハローワーク以外の相談先

現在、ハローワークが多忙を極め、なかなか相談に応じてくれない、といった声もあります。

そのようなときは次の相談先にあたってみてください。

1、都道府県労働局「総合労働相談コーナー」

あらゆる労働相談を幅広く受けてくれる窓口です。

2、その他の紛争解決機関

総合労働相談コーナーでは、希望があれば、裁判所、地方公共団体(都道府県労働委員会など)、法テラスなどの他の紛争解決機関も教えてくれます。

他の紛争解決機関

3、労働関係の弁護士等

離職の場合には雇用保険の基本手当の問題にとどまらず、未払残業代、未払退職金、あるいはハラスメントに伴う慰謝料請求など様々な問題が同時に発生していることが少なくありません。

これらを一体的に解決できるのは弁護士であり、必要に応じて弁護士との相談もご検討ください。

まとめ

新型コロナウイルスに関連して会社が業務を縮小したり、倒産したりするなどで離職に至る事例はこれからも増えていくでしょう。

また、感染症予防対策が不十分なまま仕事を続けられないこともあるでしょう。

そのような場合、離職して新しい職場を探すためには、雇用保険の基本手当などがセーフティーネットとしてしっかり整えられています。

本稿が、意に反する離職に戸惑う労働者の皆さんに少しでもお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人

玉上 信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士 
健康経営エキスパートアドバイザー
紙芝居型講師(登録商標第6056112号) 
日本紙芝居型講師協会(登録商標第6056113号)
日本公認不正検査士協会アソシエイト会員

監修弁護士

西村 雄大 弁護士

大阪弁護士会所属 
梅田パートナーズ法律事務所 代表弁護士
住所 大阪市北区西天満4-6-4 堂島野村ビル2階
電話 0120-074-013

ご相談に来ていただいた全ての方に寄り添い、 親身になって法律トラブルを解決することを使命とし、 プラスアルファの情報・一つ上のサービスを心掛けて対応します。